私的な散文

私的な散文を徒然に綴っていきます

抗ガン剤と苦痛

周りが癌患者ばかりだと、結構堪える。廻り中で癌に関する話題が、明るく語られている。患者同士、患者と看護師、患者と医師・・・ある患者同士の話の中で、いかにもB型肝炎と思われる顔色をしたまだアラフォーと思えるKが微笑みながら「いざという時の覚…

暗闇の中に気を見た。

暗闇の中でふとテレビを見ると、消えているブラウン管に何やら毛の様なものが生えている。ふと自分の手をみると、びっしりと真っ直ぐな毛のようなものが生えている。特に指にはビッシリ。なんだこれは!ひょっとしてエネルギー線が見えるのか?テレビもブラ…

ベッドの上の将棋対局

空いたベッドに新しい入院患者が入ってきた。将棋のM名人らしい。そんな有名人なら、差額ベッドの特等室に入院すればよい物をと思ったが、差額ベッド含め今は8人の大部屋しか空いてないらしい。奥さんと秘書を連れて入院看護師長も伴い、ベッド周りの整理…

般若心経戦争

夜中に目が覚めた。夜中の2時頃。眠れない。頭の中で“般若心経”をゆっくりと唱える。ブッセツ、マカハンニャーハラミターシンギョウー・・・カンジーザイボーサーギョージンハンニャーハーラーミータージー・・・何回か唱えると落ち着いてくる。その時、頭…

偏執狂

斜め前のベッドにHがいる。B型肝炎のようだ。主治医が手術の方針を話しにくる。そっちのけで自分のことを喋りだした。「私はここ50年、医者にかかったことがないんです。先生と今回こうして巡り会いましたが、次に会うのは私の死亡宣告をして貰う時でし…

密教破邪の法

西方より邪を感じた。誰かの怨みを感じる・・・生き霊だ。丑三つ時に、額に三本の蝋燭を灯し、藁人形を五寸釘で木に打ち付ける・・・その様な呪いのこもった類のものではない。無意識の内に私に対し、怨みの感情を持っている者の仕業だ。無意識内の事なので…

演歌VSクラシック

夜ベッドで寝ていると、暗い中を窓の側のファンコイルユニットの音が聞こえる。ファンが何かに当たるのか、リズムを刻んでいるように聞こえるのだ。ウンタンタンタンタ~ン、ウンタンタンタンタ~ン、ウンタンタンタンタ~ン・・・何だか演歌のリズム。頭の…

老いと成長

夜中目を覚ますとカーテンを引いているので見えるはずはないのだが、周囲のベッドの上に鈍く光る球体が見える。何だろうと目を凝らしてみると、透明な球体の中に、生まれたままの姿で、入院患者がいろんなチューブを繋がれ、浮かんでいる。何だか子宮の中に…

男の美容

最近の若い奴等は、眉毛を剃って整えたり、ムダ毛を剃ったりするらしい。気持ち悪い。頭髪もワックスか何か知らないが、塗ってケバケバに立てている。気持ち悪い。シャツをズボンの中に入れるのは格好悪いとズボンの外に出している。気持ち悪い。ズボンを腰…

煮えきらない患者

もう面会の終了時間、午後7時である。斜め前のベッドのTに面会中の家族、妻と娘2人が帰ろうとしている。5時位から来ているだろうか。明日退院らしく、その段取りの打ち合わせをしていて長引いているようだ。Tは抗ガン剤の副作用で頭髪が抜け、いつも毛…

病院幻想交響曲 空間はエーテルで満たされている

いつものように消灯時間を過ぎ、気のボールを作る訓練を始めた。かなり、上達したようだ。その時ふと目を上げると、部屋中キラキラ星で満たされている。その美しさに見入っていると星々は隣同士、立体的に直線で結ばれている。と言うのは星々の間に細かな光…

病院幻想交響曲 幻魔対戦

今日は昼間から嫌な予感がしていた。何だか血がざわめくような・・・夜10時の消灯時間の前に点滴を取り換えられ、照明を消された。やはりやって来た、魔界から・・・遠くの雲に稲妻が走るのを見るように、ベッドに寝ていて真上に見える黒雲に稲光が光る。…

病院幻想交響曲 矢継ぎ早と怒りの矢

声が甲高い人はセッカチな様な印象を受けるが、観察するとその通りだ。甲高い声というのは、単に高い声ではなく、高周波音が混ざっている声ということだ。例えば看護師さんでも声が甲高い人は、患者さんに対して矢継ぎ早の問いを発することが多いようだ。「…

病院幻想交響曲 トイレの神様

手術後結構大変だった。一つは手術中、全身麻酔するので尿道に挿入した尿管。手術終了後、病室に帰り、麻酔が完全に醒めて尿管を抜いてもらったが、それからまともに小便が出来ない。たまにそういう事があるそうだ。尿が膀胱に留まったままだと、アンモニア…

おいっ!そこの女医!

オイ!そこの女医!年上の看護師をつかまえ、タメ口とはいい根性してるな。看護師より医師の方が偉いってのか?ざけんじゃねえぞ!!!人間としてどうなんだ、その態度!そりゃ医師になる方が難しいだろう、親御さんは金も掛かったろう。看護師さんは医師に…

病院幻想交響曲 幻想交響曲がみえる

ある夜中、いつもの気の訓練が終わり、奴の急襲もなく、般若心経を唱え、瞑想していると・・・ファンコイルユニットの低音の響きが可視化してきた。視野の下の方でグレーの帯となり、右から左に流れている。流麗なメロディーが流れて、その帯に何らかの記号…

病院幻想交響曲 黄昏の悲哀と至福その2

このような経験は若い人には無理であろう。成人し、仕事に就き、その仕事を一生懸命勉強し覚える。家族を構え、子供もできる。充実した幸せな時代。壮年期、益々仕事に磨きが掛かる。そのうち若い人を指導する立場になる。 しかし、体力は次第に弱っていく。…

病院幻想交響曲 黄昏の悲哀と至福その1

手術を控えて、外科病棟に移された。手術前の患者は比較的元気な人、疾病で弱っている人、様々である。術後の患者は一様に寝たっきり、回復の早い人は翌日には自力でトイレに行ける迄回復する。呼吸器循環器外科主体の病棟なので、若い人は居ない。年老いた…

病院幻想交響曲 死を認識できるか

今晩はとても疲れた。昼間胃カメラを十二指腸まで入れられ、相当疲労してしまったのだ。最近眠れなかったが、今晩は眠りたい。入眠する時はそれが分かる。突然脈絡のない想念が浮かび出すのだ。そのうちに眠っている。しかし、自分が入眠したことを認識でき…

カレーうどんという存在

カレーうどんという存在。 茹でたうどんにカレーを掛けた食べ物。 あれはうどんなのか? カレーなのか? いやどちらでもある。 いやどちらでも無い。 うどんともカレーとも異なる新しい食べ物である。 あの食べものは偶然の産物である。 ある日曜日、独身サ…