私的な散文

私的な散文を徒然に綴っていきます

病院幻想交響曲 幻魔対戦

今日は昼間から嫌な予感がしていた。
何だか血がざわめくような・・・
夜10時の消灯時間の前に点滴を取り換えられ、照明を消された。
やはりやって来た、魔界から・・・
遠くの雲に稲妻が走るのを見るように、ベッドに寝ていて真上に見える黒雲に稲光が光る。
Kではない。何者か?
私を密教の修行者と知っての狼藉か!

私はまず密教護身法でバリアを張る。
・浄三業の印・
オンソワハンバシュダサラバタラマソワハンバシュドカン・
・仏部三昧耶の印・
オンタタギャトドハンバヤソワカ
・蓮華部三昧耶の印・
オンハンドボドハンバヤソワカ
・金剛部三昧耶の印・
オンバゾロドハンバヤソワカ
・被甲の印・オンバザラギニハラチハタヤソワカ
・・・私の周囲を透明のバリアが取り巻く。

突然、外壁を貫通して魔物が降りてくる、千手観音の姿を借りて・・・
その数え切れない手には、剣が握られている。
千の剣を振りかざし、襲ってきた。

入院して真夜中の修行により、護身法が武器としても使えることを知った。
5つの印が各々武器として使用できるのである。

まず最も強力な“被甲”でエネルギービームを千手観音に食らわす。
まるでレーザー銃だ。
両手の人差し指でビームの径を調整出来る。
まず、頭頂のチャクラから虚空に満ちるエネルギーを両手に送る。
すると、結印が溶岩の様に不気味に輝き出す。
シュルシュルと低い音から高音へ。
キーンと言い出すとエネルギーフル充填。
結印は光輝く。
そして、ターゲットにビームを当て、それを絞る。
千手観音の剣を持った手が、次々に薙ぎ払われていく。

かなりの被爆音だが、他の患者は気が付かない。
私は遠慮して、スモールアクションで戦う。
赤く輝く点が無数に現れるが、それも一つ一つ落としていく。

赤黒い大きな蜘蛛が現れる。
この蜘蛛はなかなかしぶとい。
“仏部三昧耶”を使う。これは、頭頂のチャクラだけでなく、武器である両手の結印から直接、エネルギーを得られる。
従って強力なエネルギーを放射できるが、放射速度が遅い。
近距離対戦に向いている。

“仏部三昧耶”で蜘蛛を木っ端微塵にする。
主にこの二つの印で戦っている。
敵の攻撃は執拗だが、破壊力は弱い。
護身法によるバリアーが機能しているようだ。
カーテンに黄緑のスライムが張り付き、下にボタボタ垂れている。
これを攻撃するが、ダミーの魔物である。
プレデターが身を隠す時のような屈折率の違う空気、象の歪みに身を借りてしつこく魔物が現れる。
“被甲”で蹴散してやった。

と、姿を消した千手観音がその衣を脱ぎ、妖豊な女体となって現れ、誘惑に掛かる。
シターラの音色でヒンドゥーの妖しい楽の音が響きわたる。
それに併せて女体がくねり、妖しい舞で誘う。
今は性のリピドーは下がってるんだ。
生憎だったな。
哀れみの念も交えず、女体も木っ端微塵に吹き飛ばしてやった。
魔物は黒雲に吸い込まれるように去って行った。
こちらの被害はなかったが、とてつもなく体力を消耗してしまった。

何だったのか。
なんだか、私の暗い一部のような気がする。
しかし、護身法の金剛部三昧耶の印が何の武器になるのか分からない。
金剛杵を表すようだが、その形態から盾の一種か。
これだけが使えなかった。

そして今の魔物の正体は一体何だったのか・・・

対戦が終わるとちょうど看護師さんが様子を見にやってきた。
疲れたので寝た振りをしてかわす。
夢だったかと思ったが、現実だった・・・