私的な散文

私的な散文を徒然に綴っていきます

密教破邪の法

西方より邪を感じた。
誰かの怨みを感じる・・・生き霊だ。
丑三つ時に、額に三本の蝋燭を灯し、藁人形を五寸釘で木に打ち付ける・・・その様な呪いのこもった類のものではない。
無意識の内に私に対し、怨みの感情を持っている者の仕業だ。
無意識内の事なのでなお難しい。
人間ある程度、家庭、社会に生存すると、複雑な人間関係の中で、思わぬ恨みをかう事がある。
例えば、部下の成長のため、上司はある時は厳しくきつい言葉で指導しなくてはならない。
その様なことが続くと部下はその上司を煙たがるようになる。
あの上司は苦手だ・・・その思いの裏で無意識の怨念を抱くようになるのである。
その怨念が強くなると、その相手に障りが出てくる。
今回の入院の事態もその障りが影響しているのかも知れない。
哀しい事である。

破邪の法を使うしかない。
他の患者に見られるとまずいので、消灯時間を待つ。

午後10時の消灯時間を過ぎる。

暗闇の中、西方を向き、右手で手刀の印を結び、腰に当てた左手の鞘から抜き取る。
天空に手刀をかざし、九字を切る。
横縦横縦の順に、臨(りん)兵(びょう)闘(とう)者(しゃ)皆(かい)陣(じん)裂(れつ)在(ざい)前(ぜん)。
臨、兵、闘、者、皆、陣、裂、在、前。
臨、兵、闘、者、皆、陣、裂、在、前。
臨、兵、闘、者、皆、陣、裂、在、前。
破邪の真剣で空間を切り祓うと邪悪な気は押され、神聖清浄な空気が漂い始める。

私の場合、これだけでは済まない。
次に九字の印を結びながら、各々の真言を唱える。
更に、内ばく印を結び、不動明王真言「ノウマクサーマンダーバーサラダーセンダマーカロシアタヤソワタヤウンタラタカンマン」を唱え、邪霊を捕らえる。
剣印を結び、真言「オン・キリキリ」、すぐさま刀印を結び、「オン・キリキリ」。
次に転法輪印を結び、再び不動明王真言を唱える。
そして、邪霊の力を無力化するため、外五鈷印を結び、真言を唱える「ノウマクサラバタタギャテイヤクサラバボケイビャクサラバタタラセンダマカロシャケンギャキサラバビキナンウンタラタカンマン」。
諸天救勅印を結び、真言「オンキリウンキヤクウン」を唱え、諸天の力で邪霊を包囲する。
最後に外ばく印を結び、不動明王真言を唱え、邪霊を凍らせ閉じこめる。
不動金縛りの術である。

とどめに邪霊が発せられた元に祓い清めの念を送る。
右手の人差し指を弾きながら、「オンボッケン、オンボッケン、オンボッケン」
人差し指の先から祓い清めの黄金のエネルギーが、帯を引きながら飛んでいくのが見える。
エネルギー球は進路を正しながら、ミサイルのように飛んでいく。
手応えがあった。

しかし、我が身を振り返ってみれば、嫌いな奴はかなりいる。
私は呪法も使えるが、使ったことはない。
ところが、嫌う感情が無意識の内に彼らへの怨念になり、邪霊となって掛かっているのではないか?
恐ろしいことである。
あのKを除いて、彼らに危害を加えようとは更々思っていない。
これを断つためには、おそらく知性の領域での修行が必要なのかもしれない・・・