私的な散文

私的な散文を徒然に綴っていきます

2021-01-01から1年間の記事一覧

抗ガン剤と苦痛

周りが癌患者ばかりだと、結構堪える。廻り中で癌に関する話題が、明るく語られている。患者同士、患者と看護師、患者と医師・・・ある患者同士の話の中で、いかにもB型肝炎と思われる顔色をしたまだアラフォーと思えるKが微笑みながら「いざという時の覚…

暗闇の中に気を見た。

暗闇の中でふとテレビを見ると、消えているブラウン管に何やら毛の様なものが生えている。ふと自分の手をみると、びっしりと真っ直ぐな毛のようなものが生えている。特に指にはビッシリ。なんだこれは!ひょっとしてエネルギー線が見えるのか?テレビもブラ…

ベッドの上の将棋対局

空いたベッドに新しい入院患者が入ってきた。将棋のM名人らしい。そんな有名人なら、差額ベッドの特等室に入院すればよい物をと思ったが、差額ベッド含め今は8人の大部屋しか空いてないらしい。奥さんと秘書を連れて入院看護師長も伴い、ベッド周りの整理…

般若心経戦争

夜中に目が覚めた。夜中の2時頃。眠れない。頭の中で“般若心経”をゆっくりと唱える。ブッセツ、マカハンニャーハラミターシンギョウー・・・カンジーザイボーサーギョージンハンニャーハーラーミータージー・・・何回か唱えると落ち着いてくる。その時、頭…

偏執狂

斜め前のベッドにHがいる。B型肝炎のようだ。主治医が手術の方針を話しにくる。そっちのけで自分のことを喋りだした。「私はここ50年、医者にかかったことがないんです。先生と今回こうして巡り会いましたが、次に会うのは私の死亡宣告をして貰う時でし…

密教破邪の法

西方より邪を感じた。誰かの怨みを感じる・・・生き霊だ。丑三つ時に、額に三本の蝋燭を灯し、藁人形を五寸釘で木に打ち付ける・・・その様な呪いのこもった類のものではない。無意識の内に私に対し、怨みの感情を持っている者の仕業だ。無意識内の事なので…

演歌VSクラシック

夜ベッドで寝ていると、暗い中を窓の側のファンコイルユニットの音が聞こえる。ファンが何かに当たるのか、リズムを刻んでいるように聞こえるのだ。ウンタンタンタンタ~ン、ウンタンタンタンタ~ン、ウンタンタンタンタ~ン・・・何だか演歌のリズム。頭の…

老いと成長

夜中目を覚ますとカーテンを引いているので見えるはずはないのだが、周囲のベッドの上に鈍く光る球体が見える。何だろうと目を凝らしてみると、透明な球体の中に、生まれたままの姿で、入院患者がいろんなチューブを繋がれ、浮かんでいる。何だか子宮の中に…

男の美容

最近の若い奴等は、眉毛を剃って整えたり、ムダ毛を剃ったりするらしい。気持ち悪い。頭髪もワックスか何か知らないが、塗ってケバケバに立てている。気持ち悪い。シャツをズボンの中に入れるのは格好悪いとズボンの外に出している。気持ち悪い。ズボンを腰…

煮えきらない患者

もう面会の終了時間、午後7時である。斜め前のベッドのTに面会中の家族、妻と娘2人が帰ろうとしている。5時位から来ているだろうか。明日退院らしく、その段取りの打ち合わせをしていて長引いているようだ。Tは抗ガン剤の副作用で頭髪が抜け、いつも毛…